営業のみなさんはどのように見積を作っていますか?
会社の単価表があるから?
教わった作り方があるから?
いいえ、正しい見積書の作り方は原価の積み上げからです。
見積作成において最も大切な原価管理について確認していきましょう。
営業の正しい見積書の作り方
営業は顧客との金額交渉をする役割があります。
金額交渉をする際に必要なのが見積書です。
この見積書の正しい作り方を理解しないことには一人前にはなれません。
見積書の正しい作り方について理解を深めていきましょう。
原価の把握がスタートライン
営業の正しい見積書作成のスタートラインは原価の把握からです。
- 労務サービスであれば何人動くのか?
- 材料費や外注費はいくらか?
- 会社の経費はどれくらい加味する必要があるのか?
- 物品であれば、メーカーや代理店からいくらで仕入れができるのか?
これらの情報が分からなければ見積は作成できません。
一つ一つの原価を積み上げてこそ提出する見積の総計を積算することが可能となります。
原価が分からなければどこまで下げてよいのか、どれくらい利益が出ているのかがわかりません。
営業は必ず利益が出るように見積は作らなければなりませんので、原価把握は非常に重要なのです。
市場の相場
どの業界にも競合会社があり市場の相場があります。
その相場から大きくかけ離れていると、相手に不安感を与えてしまうことがあります。
高すぎる場合はもちろん勝負になりませんが、安すぎる場合も悪い印象となる場合があるのです。
例えば、ノートパソコンがほぼ同じスペックで70,000円程度の商品が並んでいる中、30,000円の商品があったらどうでしょう?
大丈夫と言われても、欠陥や不足があるのではないかと不安を感じてしまうことがあると思います。
市場の相場を把握して、大きく離れないことも大切なのです。
競合の予測
見積する際には競合の情報を可能な限り仕入れましょう。
- 何社競合するのか?
- 競合している会社名?
- 普段使っている会社名?
これらが確認できると見積に反映することができます。
競合の会社名は直接的に聞くと悪印象となることもあるので、様子を見ながらお伺いを立てましょう。
過去の事例でA社は同条件で100万円だった、B者は120万円だったというように各社見積ラインが異なります。
このように各社の見積金額の情報を集積しておくとよいでしょう。
そして、今回A社が競合だから100万円を切るくらいが勝負ラインだな、と競合が提出するであろう価格を想定します。
見積を作るときは競合の提出見積の予測をすることも重要ですよ。
>>競合の情報収集をしよう!営業戦略に活かせる5つのポイントとは?
正しい見積原価の種類
正しい見積書を作成するには原価計算が不可欠です。
原価は大きく分けると3つに区分されます。
それは労務費・材料費・諸経費です。
これら3つに分けて原価計算をするのがポイントとなります。
それぞれの積み上げ方を確認してみましょう。
労務費
労務費とは人件費のことを示します。
それは給料や手当、保険などすべてを含んだ一人にかかっている原価となります。
測量の労務費の原価を積み上げる例で考えてみましょう。
測量士Aさんは月の諸々含んだ総支給が500,000円とします。
測量士補Bさんは総支給400,000円
アルバイトCさん200,000円
それぞれ20日勤務とするとそれぞれの原価は
測量士Aさん1日当たり25,000円
測量士補Bさん1日当たり20,000円
アルバイトCさん1日当たり10,000円となります。
これに対し見積は下記のように利益を乗せた単価設定を行うのです。
項目 数量 単位 単価 金額
測量士 1 人工 35,000 35,000
測量士補 1 人工 30,000 30,000
測量手元 1 人工 18,000 18,000
人件費については、国で労務費調査を行い年度ごとの基本単価を設定しています。
公表されている労務単価と比較をして自社の単価を設定しましょう。
材料費
材料費とは購入する原価や消耗品の償却に関わる機械損料などを示します。
購入原価は明確ですよね。
購入手間とどれだけ利益を乗せるかを考えれば大丈夫です。
消耗品の償却の事例として測量機材で考えてみましょう。
使う測量機材の購入費が総計100万円だとしましょう。
それを500回使って償却するとしたら、100万円÷500で1回当たり2,000円の機材損料を原価として考えなければならないことになります。
つまり、見積上は機材損料として下記のように利益を乗せて計上するのです。
項目 数量 単位 単価 金額
機材損料 1 台 4,000 4,000
これで、原価に対して利益を乗せることができました。
利益の乗せ幅は市場の相場を中心に設定したいところです。
諸経費
諸経費は労務費や材料費に対する比率で計算します。
多くの会社で10%から30%程度を計上し、営業経費や本社経費などの分をまかないます。
また、雇用保険・厚生年金などの法定福利費なども諸経費の1つです。
法定福利費を諸経費に含むか人件費にかけるかは会社の見積の仕組みによるかもしれません。
諸経費における原価の考えは非常に難しいところです。
必ず何%計上しなければいけないという決まりはありません。
会社ごとの考え方次第です。
仕事が内定していれば通常単価よりも諸経費で上積みしたいところでもありますし、価格競争においては最低限にしたいところでもあります。
最低限のラインは、営業がサービスの範囲動く人工分くらいは確保できるようにしたいところです。
正しい見積書の原価管理
原価管理を甘くみていると痛い目に合うことがあります。
当然見積金額が甘くて仕事が取れないでしょうし、利益率の非常に低い仕事となってしまうかもしれません。
具体的な作成フローを確認して受注できる見積を作れるようになりましょう。
正しい見積作成フロー
原価を正確に積み上げなければ見積は作成できません。
何も考えずに見積したり、単価表に当てはめるだけの営業では取れる仕事が取れないだけでなく、赤字の仕事を受注してしまう可能性もあります。
原価に対してどれだけ利益を載せるか?
競合はどれぐらいの見積となりそうか?いくらなら受注できるかを考えてこそ、見積は作成できるのです。
正しい見積作成の考え方は以下のフローとなります。
原価の把握→市場相場の把握→競合の予測→総計を仮決定
→見積単価に当てはめる→値引き調整(原価交渉・最低ラインの確認)
見積体裁を整える→見積価格決定
営業の見積書作成において正しい手順は見積単価からスタートするのではなく、原価の積み上げから出したい金額を決めて調整していくことといえます。
利益の出る最低価格の設定
原価から積み上げて利益を乗せた最低額。
ここまではギリギリ下げてもよいというラインは必ず持つようにしましょう。
例えば原価8万円とした場合、利益を乗せて10万円までなら受けるがそれ以下にはできない。
このように最低額は決定させます。
見積は最初から最低額で提示してしまうと、値引き交渉がきたときに全く値引きできなくなります。
購買部などお金に厳しいセクションからの交渉に、全く応じない場合印象が悪くなることがあります。
ですから、どれだけ取りたい仕事の見積であっても多少の遊びは残しておくことが大切です。
最低ラインを10万円とした場合、15万円で見積提出し、12〜13万円を落とし所とするような交渉が求められるのです。
仕入れ原価の交渉
当初考えていた原価では受注できない場合も出てくるでしょう。
競合もまた、原価を削ってなるべく安い見積を提出してきます。
最低ラインのつもりで出した見積に対し他社のほうが安い、それでも仕事を取りたいということであれば、仕入れ原価を削るしかありません。
協力会社、仕入先、自社の商品開発、技術部など条件を詰めて、仕入れ原価を見直すことで見積価格の引き下げを検討してみてください。
原価交渉も営業の重要な仕事です。
どれだけその仕事を取りたいのか、どれだけその仕事を取るメリットがあるのかを説明して、必要に応じて詰めた原価交渉を行いましょう。
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営業の正しい見積書の作り方 まとめ
見積作成は単価に当てはめていき作成するというのは間違いです。
原価の積み上げと利益の確保、市場の相場、競合の予測から最低価格を設定して交渉すべきです。
その中で可能な限り最大限の利益を出す見積を作成するのが営業の仕事であり、原価の積み上げから受注獲得まで戦略を立てることは営業の醍醐味の1つです。
金額がピッタリ当たって受注したときの喜びは、見積作成の原価管理や戦略をすればこそ感じることができるのです。
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