建設業界はまだまだ下請けいじめが行われている実態があります。
元請けは下請けにお金を払うので下請けにとって元請けお客さんに当たり、元請けは下請けに施工指示を行うわけですから、立場的に元請のほうが強くなるのです。
しかし、元請けの強い立場を利用した下請けいじめやパワハラが許されてよいわけがありません。
そこで、どのような下請けいじめが行われているのか事例を交えて紹介します。
下請けいじめに対してどのように対処していけばよいのか考えてみましょう。
建設業における下請けいじめとは
下請けいじめは現場レベルでどのようなことが行われているのでしょうか。
実際に受けた事例を交えて、下請けいじめの実態を6つ紹介します。
①支払いを渋る・削る
●支払いを渋る・削る下請けいじめの事例
「この前ミスしたから支払い止めるね」「全部終わるまで支払えないから」「前回のトラブルぶん値引きさせてもらうから」「ちゃんとやらないなら払わねーぞ」
下請けにとって元請けはお客さんに当たります。
お金を払ってもらって完結するわけですが、建設業界はお金にルーズな業界です。
請求書を紛失した、回し損ねたといって数か月入金が遅れることは日常茶飯事です。
支払いを渋る・削るような下請けいじめは後を絶ちません。
下請けは労務費や資材の費用を先払いして、元請けの支払いサイトに合わせて請求することになります。
請求の際にミスや問題を棚上げして、支払いを渋ったり削ってくることがあります。
協力会費や勝手な値引きなど、支払いが後払いのため入金されるまで下請けは安心できないのが実態です。
②不当に買い叩く
●不当に買いたたく下請けいじめの事例
「他社は○○万円でやるっていってるけどどうする?」「○○万円まで下げなきゃほかに頼むから」「金額下げないならいいよ、二度と使わないから」
下請けは元請けから仕事をもらう立場にあります。
元請けに営業する立場になるので、仕事が欲しいし切られたくないわけです。
元請けはお客さんであるという強い立場を利用して、不当に買い叩く下請けいじめも行われています。
切られてしまっては困る下請け業者は泣く泣く価格を下げる場面も多いのが実情です。
③契約外のことをさせる
●契約外のことをさせる下請けいじめの事例
「ついでに(契約外のこと)やっといて」「(契約外のこと)やってもらうの当たり前でしょ」「(契約外のこと)やらないなら次はよそに頼む」
工事にはイレギュラーや契約外のどちらの仕事かわからないことがたくさんあります。
取決めの段階ではそれほど細かいことは決められないのです。
動き出してから元請けからは契約外のことを求められることがありますが、下請け行業者が仕方なく契約外の内容まで対応しているが実態です。
④増額を認めない
●増額を認めない下請けいじめの事例
「増額の変更はできません」「先に金額の相談してもらわないと増額は認められません」「それぐらいサービスでやってよ」
工事には内容の変更がつきものです。
しかし、取決めをして契約をした後の増額変更を拒まれることがあります。
業務内容が増えているのにもかかわらず、増額を認めてくれないような下請けいじめが行われるのです。
契約変更の手続きは確かに煩雑な部分はありますが、面倒くさいから・会社への報告が大変だからという理由で認めてもらえず泣き寝入りしているケースも珍しくありません。
⑤無理な工期を要求する
●無理な工期を要求する下請けいじめの事例
「どんなことがあっても〇日までに終わらせろ」「この日までに終わらせられないなら違約金を請求する」「ウチとよその仕事どっちを取るんだ」
工事には多くの人手が必要です。
どうしてもマンパワーですので繁忙期や工程によっては対応が難しい場合もあるんですね。
それでも「なんとかしろ!」の1点張りで、無理な工期をどうにかするまで要求してくることがあります。
怒鳴られたり、脅されたりして残業や休日出勤をしている技術職は少なくないのです。
⑥利益供与を求める
●利益供与を求める下請けいじめの事例
「仕事出すんだからわかってるよね」「歳暮はビールがいいな」「現場の忘年会の費用くらい持ってくれるよね」
元請けの立場を利用して、利益供与を求めるようなこともひと昔前は当たり前のように行われてきました。
仕事を出す代わりにキックバックや金品の要求をされることもあったんですね。
ただし、キックバックや金品に変わる何かを受け取るようなことは違法となる可能性があります。
キックバックの強要など行われることが少なくなりましたが、見えないところで行われているかもしれません。
下請けいじめの対処法
下請けいじめにはいろいろなケースがあることがわかりましたが、どのように対処すればよいでしょうか?
下請けいじめの対処法について解説していきます。
協力会社として同等の立場を取る
「元請け」「下請け」というと元請けのほうが立場が上で、言いなりのような関係性がうかがえます。
しかし、「協力会社」という立場で考えると、事業を協力して完成させる関係性と捉えることもできます。
協力会社の立場で考えると元請け業者から料金は受け取りますが、同等の対価(サービス)を提供する同等の関係といえます。
協力して事業を完成させる仲間として同等の立場で仕事をできるよう、関係性をアピールするとお互いの認識が変わるかもしれません。
取引しなくてもいい
ひとつの会社に依存してしまうと取引を止められてしまうと経営に大きな痛手となります。
元請けに切られると困るような関係が下請けいじめに繋がっているのです。
営業活動を幅広く展開し、元請から仕事を切られても他に仕事がある状況を作れれば、対等な関係性を築けるようになります。
下請けいじめをしてくるなら取引しなくてもいいと思えるように、幅広く営業活動することが自衛に繋がります。
元請けの上長に相談する
どこの業界にもいると思いますが、建設業界にも態度が悪く横柄な人がいます。
すべての元請けが悪いわけではなく、下請けいじめをする人も一部の人です。
会社ぐるみで下請けいじめをするような社風であれば、取引をやめるのがよいかもしれませんが、一部の職員に問題があるなら、その上長に相談するのもひとつの手段です。
あくまで会社の一従業員ですから、下請けからのクレームが集まってくれば、会社も配置転換や評価にも関わってくるはずです。
報復も怖いですが泣き寝入りすることはありません。
一現場だけの関りであれば、ときには正当な意見をいうことも必要ではないでしょうか。
下請法を盾にする
元請けと下請けに関する法律で下請法があります。
下請法は下請取引の公正化・下請事業者の利益保護を目的とする法律(正式名称:下請代金支払遅延等防止法)です。
基本的に建設工事の契約には適用されませんが、すべて規制の対象外というわけではありません。
キックバックなど利益供与は違法となる可能性があります。
下請法を理解した上で盾にすれば、下請けいじめの抑止力となる可能性もありますので、困ったときには下請法を確認してみましょう。
建設業における下請けいじめとは?まとめ
建設業における下請けいじめの事例を6つ紹介しました。
建設業界ではこのような下請けいじめは依然として残っているのが実情です。
下請けいじめをされる営業マンや技術職は本当に嫌な思いをしています。
下請けではなく、事業を円滑に進める協力会社として対等な関係を築いていきましょう。