公共工事における入札書の提出は大きく3つに分類されます。
紙入札・電子入札・郵便入札です。
入札の主流は電子入札に移行してきていますが、紙入札もまだまだ実施されているのが現状です。
紙入札とは何か?
紙入札はどのような流れで行われて、どのような問題点があるのか?
わかりやすく解説します。
紙入札とは?
紙入札とはその名の通り、紙による入札書によって行われる入札です。
電子入札が本格的に普及するまでは一般的だった紙入札ですが、電子入札の普及に伴い減少しています。
電子入札システムが普及した今もなお、紙入札を採用している自治体は少なくありません。
地方部の自治体は予算がなくて電子入札へのシステム化に切り替えられないんですね。
入札当日には応札する各社が一堂に集まり、会社の代表印を押した入札書を提出します。
紙入札ではその場で入札書が開札され、最も安い価格で応札した会社が落札者となります。
⇩入札の基本的な仕組みについてはこちらをご覧下さい
>>入札の仕組みをわかりやすく解説。基本となる3つの入札制度とは?
紙入札の流れ(入札当日まで)
紙入札の場合、どのように入札は行われていくのでしょうか?
一般的な紙入札の流れをわかりやすく解説していきます。
- ①入札広告の公開
- ②入札参加申請
- ③必要書類の準備
まずは入札告示から入札当時までの流れを確認しましょう。
入札公告の公開
注者の入札公告や指名によって案件が公開されると、案件公示書などにより入札方法が示されます。
電子入札であれば受付期間内に入札書をインターネットのシステム上で提出します。
紙入札の場合は入札場所と入札時間が示されて、直接行って応札することになります。
入札場所と時間が示されている場合は紙入札です。
入札参加申請
電子入札であれば電子上で入札参加申請が可能です。
ただし、紙入札の場合は入札参加申請を直接訪問して行う場合があります。(特記仕様書などの設計書も直接行かないと受け取れない場合もあります)
入札参加申請が受理されたら、入札当日までに応札額を積算します。
必要書類の準備
紙入札当日に書類の不備があった場合失格となってしまいます。
- 入札書(押印・捨て印の上複数枚)
- 委任状または名刺
- 封筒
- 特記仕様書など書類一式
これらの必要書類は入念にチェックして準備しておきましょう。
必要書類についてわかりやすく解説します。
入札書(押印・捨て印の上複数枚)
入札書は発注者指定の様式にて契約印の押印と捨て印をして複数枚用意しましょう。予定価格を超過した場合など再入札となる可能性があります。応札額を決めた1枚は封筒に入れ、金抜きの入札書を準備しておきます。
委任状または名刺
代表者が直接応札する場合は名刺を提出します。代表者以外が応札する場合には委任状の提出が必要になります。発注者様式を確認の上、代表印・捨て印を押して準備しておきましょう。
封筒
封筒の指定は特にない場合もありますが、入札書は封筒に入れて提出します。封筒には工事(委託)件名、会社名、工事(委託)番号などを記載し、A4三つ折りサイズの封筒に割り印を押しておくのが一般的です。
特記仕様書などの書類一式
特記仕様書や図面などは返却が求められる場合があります。コピーやスキャンなどの控えは取っておき、返却に備えて持参するようにしましょう。
>>特記仕様書とは?簡単に分かる!特記仕様書の意味と正しい読み解き方
紙入札の流れ(入札当日)
紙入札当日の流れを知らないと不安ですよね。
当日の流れはざっくり5ステップです。
- ①入札メンバーと挨拶
- ②委任状と入札書の提出
- ③予定価格と最低制限価格と照らし合わせ
- ④最安価格の業者が落札
- ⑤契約担当者と実務担当者に挨拶
紙入札当日の流れをわかりやすく解説しますね。
入札メンバーと挨拶
入札当日には入札メンバーが一堂に会します。
ライバルとなる会社なわけですが、礼儀として名刺交換くらいはしておきましょう。
「〇時〇分ですか?」と時間を聞いて、同じ時間であれば入札メンバーで間違いありません。
もちろん相手から名刺交換を求められたら、快く応じて挨拶することがマナーです。
絶対に遅刻してはいけませんので20~30分前程度には着くように行動しましょう。
委任状と入札書の提出
時間となりましたら入室して、適当な間隔で着席となります。
入札担当者3人程度が前面に座ります。
指示に従って委任状や名刺(名刺は代表者の場合のみ)を提出します。
そして、指示を受けましたら各社入札書を封筒のまま入札箱に投函します。
予定価格と最低制限価格と照らし合わせ
各社入札書の提出をしたら開札となります。
入札書の書類チェック、金額チェックが細かく行われます。
件名や宛名などが間違っていると失格となる場合がありますので注意しましょう。
ここで、予定価格と最低制限の照らし合わせが行われます。
最安価格の業者が落札
開札の発表を契約担当者が行います。
緊張の瞬間ですね。
最安価格の業者と予定価格の照らし合わせで落札業者が決定し発表されます。
この後、各社の応札金額も発表されます。
この情報は今後同じような入札の際の参考になりますので、必ず控えておきましょう。
開札結果の発表後、落札業者を残してすべて退席となります。
契約担当者と実務担当者に挨拶
無事落札した場合は、契約担当者に挨拶に行き今後の流れを確認します。
その場で契約書の作成方法について確認する場合と、契約書ができたら後日連絡をもらえる場合がありますので確認しましょう。
次に実務担当者を確認して挨拶に行きましょう。
実務担当者とは名刺交換程度に留め、後日契約書の提出と合わせて詳細の打ち合わせをすれば大丈夫です。
紙入札の問題点
紙入札から電子入札へと移行が進んでいますが、やはりいくつかの問題点があります。
紙入札の問題点も覚えておきましょう。
入札に各社が集まる労力
入札書の提出に各社は直接集まらなければなりません。
決まった時間に決まった場所。
ここに時間と労力が必要になります。
ただでさえ不調になった場合は、資料の読み込みや積算に時間がかかって無駄骨となるのに移動や拘束時間もかかります。
場所が近い発注者だけではありませんので、紙入札で時間が要することは応札業者に対する負担でもあります。
発注者も時間と手間がかかる
発注者も紙入札にすれば時間と場所が拘束されています。
1つの入札が15分程度としても、公正な入札の場には契約課から3人程度は人を要します。
すべて税金で行われていることですが、自分たちの時間と手間がかかることを進んで行うことには疑問が残りますね。
地方の自治体ほど紙入札の文化がまだまだ根強く残っています。
電子入札のシステム化をする予算や手間の問題があるのかもしれません。
談合の温床になりやすい
紙入札は昔から談合の温床となっています。
各社が応札の場に集まることで、入札メンバーが交流することができます。
金額の話し合いを入札前にすることができますし、連絡先や入札担当者がわかります。
次の同じような開札の際には、事前に声を掛け合うこともできるわけです。
談合は犯罪ですので、絶対に行ってはいけません。
ただ、紙入札がその環境を作ってしまっているのは問題といえるでしょう。
⇩談合についてもっと詳しく
>>談合とは?入札談合の仕組みをわかりやすく解説!絶対にやってはいけません
紙入札とは?紙入札の流れと問題点 まとめ
紙入札から電子入札への移行が進んでいますが、まだまだ紙入札は地方部を中心に行われています。
手間や労力、談合の問題を考えるといち早く電子化を進めていくことが望まれます。
それでも、紙入札が行われる際には流れや必要書類はしっかりと押さえておくことが大切です。
紙入札に行く経験が少ない人は緊張するかもしれませんが、難しいことはありませんから大丈夫ですよ。