入札における「最低制限価格」
公共工事に携わる方ならこの最低制限価格制度について理解することが大切です。
しかし、インターネットで検索しても難しい言葉ばかりですね。
そこで、最低制限価格制度についてわかりやすく解説していきます。
最低制限価格制度とは
最低制限価格制度とはどういう制度でしょうか?
意味・目的・効果からわかりやすく解説していきますね。
最低制限価格制度の意味
入札には必ず予定価格が設定されます。
予定価格とは入札における上限価格です。
>>入札における予定価格とは?わかりやすく予定価格の仕組みを解説します
それに対し最低制限価格とは入札における下限値の価格です。
最低制限価格は設定される場合と設定されない場合があります。
最低制限価格が設定されない場合は、予定価格1億円の工事でも1,000円で応札したら落札となります。
最低制限価格が設定されている場合は、失格またはきちんと施工できるか調査が入ります。
この調査を低入札価格調査(低入調査とも呼ばれる)といい、厳しいチェックが行われることになります。
>>低入札価格調査とは?低入(ていにゅう)調査についてわかりやすく解説します
最低制限価格制度の目的
最低制限価格はなぜ設定されるようになったのでしょう。
その目的には大きく2つ考えらます。
- 質の悪い業者の落札を防ぐ
- 積算の誤りを防ぐ
過去にはこれらの問題がよく起こってきたんですね。
詳しく解説します。
質の悪い業者の落札を防ぐ
最低制限価格制度が採用されない入札では、どうしても実績を作りたい会社が価格度外視で応札することもありました。
また、すべて下請けに丸投げするような入札もはびこっていたんですね。
低入札価格調査をすることで下請けなどの情報も精査するので、質の悪い業者を失格にすることができるようになりました。
積算の誤りを防ぐ
特記仕様書や内訳を正しく読み解いて応札しないと、落札したはいいが考えていた条件と違ったとトラブルになることがあります。
甘く考えて低い価格で応札する業者を、最低制限価格ではじくことで入札の失敗を防ぐ狙いがあります。
最低制限価格制度の効果
最低制限価格制度が導入されるようになり、不当に安い価格で応札するような低品質の業者の落札を防げるようになっています。
また、積算の誤りによって工事中止となるようなことも減っています。
ただ、まだまだ発注者の考えている予算や最低制限価格に対し、実行価格は乖離していることが多いのも事実です。
最低制限価格以下でも十分利益が出る場合もありますし、予定価格でも赤字になってしまうので全社辞退となることもあります。
大きな入札や一般競争入札ほど、低品質業者が応札すると困りますので最低制限価格が採用されることが多いですね。
最低制限価格制度の現状
最低制限価格制度が採用される入札が増えてきましたが、まだまだ問題点もあります。
最低制限価格の問題点もわかりやすく解説します。
最低制限価格ギリギリの読み合いとなるだけ
最低制限価格は入札価格の下限値なわけですが、最低制限価格でも利益が出る入札はまだまだあります。
ですから、各社落札したい入札があれば、最低制限価格ギリギリを狙った応札をすることが多いんですね。
結局、落札したい業者多い入札は最低制限価格の読み合いが行われるだけとなっている現状があります。
低入札価格調査となる覚悟で応札されている
失格ではなく低入札価格調査となると予測される場合は、調査前提で最低制限価格を潜った応札がなされています。
最低制限価格を読んで応札した会社は悔しいですよね。
最低制限価格を下回ると失格とすると読んで応札したのに、低入調査ありきで応札した業者が失格とならずに落札となったら。
最低制限価格はそんな理不尽が起こる可能性もあるのです。
最低制限価格が読めない会社はなかなか落札できない
最低制限価格制度が導入されて、価格を下げることで受注を重ねてきた企業はきちんと積算することが求められるようになりました。
これはすごく当然で当たり前なのですが、特記仕様書・標準仕様書・内訳書・現場状況などをきちんと理解して応札する必要があります。
ここを怠ったも落札できてきた企業が淘汰されています。
これは問題点というよりはメリットかもしれませんね。
最低制限価格の予想の仕方
最低制限価格はどのように予想したらよいでしょうか?
最低制限価格の読み方は入札によって異なるので、ケースバイケースの予想の仕方を解説します。
予定価格と最低制限価格を公表している場合
予定価格と最低制限価格が公表されている場合があります。
これは発注者の怠慢かもしれません。
例えば、予定価格1億円、最低限価格70.0%と表記している場合は7,000万円が最低制限価格となります。
落札したい業者はみんな7,000万円で応札し、くじなどで落札業者を決めることになります。
これは少し公正な入札とはいえない可能性ありますね。
予定価格公表なし最低制限価格比率公表の場合
予定価格は公表していないが、最低制限価格は70.0%と公表している場合があります。
これはケースとしては結構多いですね。
予定価格を読む必要がありますので、発注者ごとの積算基準に従って計算していくしかありません。
予定価格を正確に積めた会社が最低制限価格を読み解くことができます。
公表されていない官積をいくらで積んでいるかを読み解けるかがカギとなります。
最低制限価格のない場合
予定価格も最低制限価格も公表していない場合、これは最低制限価格のない入札です。
基本的には最も安い入札金額で応札した会社が落札者となります。
最低制限価格を決めていないわけですから、原価から積んで積算するしかありませんね。
ただし、予定価格に対する応札価格があまりにも低い場合、低入札価格調査となる場合があります。
この低入札価格調査で失格となる場合もありますので注意しましょう。
最低制限価格制度をわかりやすく解説 まとめ
最低制限価格制度は入札価格の下限値を決める制度です。
不当に安い金額で応札したり、積算の誤りを防ぐために運用されています。
これにより質の悪い業者を淘汰することができるようになっていますが、まだまだ発注者と応札業者の積算には乖離があります。
お互いの利益をしっかり確保しながら公正な入札が行われるよう、最低制限価格制度はしっかり運用していく必要がありますね。