売掛金回収業務を誰が行うのか?
これは会社によって異なりますが、営業マンが行うこととしている会社も少なくありません。
どんなときに未入金が発生するのか?という理由から、ケース別に督促の方法を解説していきたいと思います。
未入金が発生する理由
未入金が発生する理由を明確に確認しましょう。
下記に考えられる未入金の理由を挙げてみます。
会社の経理から「入金予定日に入金が確認できない」と報告があった場合は早急に確認することが大切です。
自社に原因がある場合
まずは自社の入金管理が正しいかを確認することが重要です。
先方に入金がないので確認をお願いしたのに、自社のミスであったということだと非常に失礼になります。
下記に自社に原因がある場合を挙げてみます。
単純なミスばかりですが起こりがちなことばかりです。
では、1つ1つケースごとに確認していきましょう。
>>営業が起こしがちなミスやクレーム。原因と対策を考えよう。
支払いサイトを間違えていた
「支払いサイト」とは顧客ごとに定められた請求書受付の締め日から、実際に取引代金を支払うまで期間を示します。
例えば、月末締め翌末払いの場合で考えてみましょう。この場合支払いサイトは30日ということになります。
また、翌々末払いであれば60日サイトということになります。
締め日については請求書の発行日は関係ありません。
請求書の作成日が10月15日であっても、翌末締め翌末払いの会社であれば10月末締め11月末払いとなります。
この支払いサイトは顧客ごとに異なります。
請求管理上、入金予定日の報告を営業が行うことが多いでしょう。
もし、翌々末払いが支払いサイトの顧客に対し、翌末払いと報告してしまえば未入金として会社からあがってきてしまいます。
必ず正しい支払いサイトで社内処理されているかを1番最初に確認するようにしましょう。
請求書上の不備
請求書の宛名、品名、日付、代表印など請求書は事務処理上大切な書類ですので、不備があった場合受付できなくなるなってしまいます。
請求書上の不備で受付できない場合、再提出となり入金日の遅れが発生することがあります。
自社のミスであれば仕方がありませんが、顧客から再提出指示がなく、入金予定日に入金されないことで発覚することもあります。
どちらにしても、請求書は不備なく作成することが重要です。
細かくチェックするとともに、顧客に確認連絡の前に請求書の控えを確認するようにしましょう。
送り先が間違えていた
送り先について正確に把握して郵送しましたでしょうか?
請求書については一部電子化も進んできてはいますが、まだまだ請求書面の郵送も行われているのが実情です。
請求書の送り先は請求時に必ず確認することが大切です。
総務・経理課宛に送るのか、担当者宛に送るのか、本社宛に送るのか、まぎれてしまうことがありますので注意しましょう。
また、封筒の住所や宛名の不備も考えられますので、未入金発生時は送り先を郵便記録などで見て確認してみてください。
経理上の確認ミス
実際に顧客は入金しているのに経理上の確認ミスであった場合、顧客に確認や督促を行うと非常に失礼になります。
[入金が予定日に確認できないので確認してもらえますか?」
と確認してもらいながら、
「経理の確認ミスでした。入金していました」となると顧客も嫌な思いをするはずです。
社内ミスで信用を失うのは最も避けたいところです。
振込口座を複数有している場合などによく発生します。
念のため確認してもらってから問い合わせするようにしましょう。
顧客担当者に原因がある場合
自社の不備がないことが確認できましたら、顧客に原因がある可能性があります。
未入金の理由と入金予定日の確認をするようにしましょう。
下記に担当者の怠慢が理由となる場合を挙げてみます。
では、それぞれのケースについて解説していきましょう。
担当者が紛失してしまった。
担当者の怠慢による最たるケースです。
「請求書を郵送します」と連絡していても、忘れる人は常習的に紛失を起こします。
未入金確認時点で、「請求書が届いていない」「送ってもらいましたか?」と回答される場合、担当者が紛失している可能性があります。
郵送記録の控えを送って郵送していることを証明しましょう。
それでも、締め日付近は請求書が集中してしまうので起こりうることではありますが、担当者紛失が最小限になるような工夫が大切です。
請求書を送る前の連絡、請求後の到着確認の連絡、入金予定日の再確認である程度は予防できます。
担当者が経理に回していなかった。
請求書が届いているのは把握していたが、経理に回すのを忘れてしまっていたケースです。
「会社に出すのを忘れていました。申し訳ありません」と未入金理由が明確になって、顧客も詫びているのであれば、仕方がないと思えるはずです。
入金日の確約を取ることで完結するケースとなります。
締め日に間に合わなかった。
請求書については締め日と必着日が顧客ごとに設定されています。
例えば、月末締めの請求書の必着日が翌5日と設定されていれば、翌5日までに請求書が届けば月末処理とするということになります。
つまり締め日は過ぎてもよいが、必着日を過ぎると請求書は原則翌月処理になってしまうということです。
請求書の到着は郵送手配の兼ね合いもあり、ギリギリとなることがあります。
「顧客から請求書の締めに間に合わなかったから」次月処理させてほしいと依頼されることもあります。
連絡なしに処理が間に合わず未入金となることがありますが、その場合は経理に翌月分として処理が回っているか確認が必要となります。
担当者の故意
わざと担当者が処理を受け付けないケースもあります。
商品やサービスの不備を理由に受付を止めているのです。
請求書送付時に相談があれば話は別ですが、後付けで不備を指摘してきたり、説明なしに入金を止めたりしている場合は悪質な可能性があります。
入金ストップはルール違反です。
入金を止めている明確な理由を確認し、打ち合わせや督促を行う必要が行いましょう。
会社の経営状態に不安がある場合
会社の経営状態に不安がある場合何らかの気配があるはずです。
担当者は請求書をまわしているのに、入金が遅れるというのは会社の経営状態を示している可能性があります。
いち早く回収の必要がありますので精査してください。
下記に会社の経営状態に不安があることが理由で未入金となる場合を挙げてみます。
では、それぞれのケースについて解説していきましょう。
資金繰りの問題
会社の経営は銀行からの借り入れと返済を行いながら経営します。
月々の銀行への返済額の捻出が入金見込み額の遅れなどに伴い厳しくなると、業者への支払いを後回しにすることが主な原因となります。
銀行への返済が滞ると大きく信用を失い、今後の借り入れが困難になりますので、業者への支払いをストップさせるのです。
担当者から「会社には請求書出したのだが」「資金繰りの関係で」というような回答の場合は要注意です。
入金日の猶予依頼
「入金日だけど来月末に変更してもらえませんか?」
「あと1か月待ってもらえませんか?」というような支払いの猶予依頼は資金繰りに問題がある証拠です。
請求書が届いているのが分かっていて、支払いを止めているという状況は非常に危険です。回収に向けての対策を練る必要がります。
手形払いに変更依頼
一般的に労務サービスや少額の取引などについては現金払いが主流で、15~60日の支払いサイトで取引代金を支払います。
それに対して手形払いとは、「支払期日に手形額面を支払うことを約束した有価証券」を表します。
手形の場合、現金化までに60日~180日サイトが一般的で時間を要します。
そして、手形を現金化する前に会社が倒産してしまうと回収不能になります。
そのためなるべく現金払いでお願いしたいところです。
それでも、現金払いの予定を手形払いに変更依頼をしてくる場合は、債券の先延ばしをしたい理由として資金繰り難が考えられます。
振込予定日を回答するも振り込まない
「〇月〇日に支払います」と回答しておきながら、振り込みをしないというのは悪質な対応になります。
1回目の遅れであれば事情によっては仕方がないということになりますが、2回目の遅れとなるとかなり悪質です。
遅れの理由を明確に確認することが必要したうえで、最悪の場合債券回収のために本格的に動く必要があります。
⇩未入金から倒産リスクを察知できなければ回収不能になってしまいます。
>未入金は倒産の合図?新型コロナウィルスで増える倒産リスクに備えよ!
入金遅れに対する督促
未入金が確認されたときの営業が行うべき対応や督促方法をフローにより確認してみましょう。
自社に原因がある場合
・支払いサイトが間違えていた→正しい入金予定日を報告
・請求書上の不備→請求書の再送と入金予定日の確認
・送り先が間違えていた→請求書の再送と入金予定日の確認
・経理上の確認ミス→顧客に確認不足を謝る
⇩ 自社に原因なし
顧客に原因がある場合
担当者の怠慢→未入金理由と入金予定日の確認
回答期日の設定 入金予定日の確約 請求書の再発行は原則行わない 必要に応じて直接訪問
会社の経営状態の不安→入金予定日の確認と確約(必要に応じて書面)
回答期日の設定 直接訪問 成果物や担保の引き上げ 督促状を送る 代理人(弁護士)を立てる
では、督促の方法や流れについて確認していきましょう。
担当者の怠慢による場合の督促
ず確認しなければならないことは下記の2点です。
・入金されなかった理由
・入金予定日
入金されなかった理由が担当者の怠慢によるものであれば、入金予定日の確約を取り会社に報告して完結となります。
ここで重要なことは入金予定日の確約と予定日を可能な限り早めてもらうことです。
担当者の怠慢なのであれば顧客の締め日に関わらず早めの入金をお願いしなければなりません。
10末締め翌末払い(11末払い)の顧客の場合で考えてみましょう。
12月頭に未入金発覚したのであれば、再請求すると1月末払いとなってしまいます。
最低でも前月の締めに組み込んでもらい12月末までに入金をお願いします。
原則、再請求や先方の支払いサイトの希望を認めないことで入金を督促します。
ただし例外として、入金の確約が取れて支払いが問題ないだろうという状況が確認できれば、再請求や顧客サイトに準じることを認めましょう。
恩を売ることで今後の営業に活きる場合もありますので、臨機応変に対応が必要です。
会社の経営状態に不安がある場合の督促
入金予定日の回答をもらっても本当に入金されるかわかりません。
特に2回以上の未入金や支払日の猶予の相談を受けた場合は要注意です。
電話だけではなく、直接訪問して入金に関する打ち合わせをするようにしましょう。
直接訪問の際には業務実態、従業員の様子などを確認し、倒産などの気配がないか確認します。
- その場で入金日の予定が立てられない
- 予定日について回答があるものの本当に入金されるかが不安
このような場合は支払のための担保を回収する必要があります。
納品した成果物や商品について、支払があるまで担保することで万が一倒産した場合に備えることが重要です。
ここまでが営業マンとしてできる範囲となるでしょう。
担保の回収や入金の目途がどうしても取れないようであれば、会社に報告し督促状や代理人(弁護士など)の対応を判断してもらいましょう。
売掛金回収と未入金管理 まとめ
営業マンの本質は受注活動です。
受注活動のみに専念できる営業職であれば未入金の督促は関係ない話かもしれません。
しかし、受注してから納品・請求までの一連を管轄する必要のある営業は、未入金の管理や督促まで行わなければなりません。
顧客に失礼のないように気を付けるとともに厳格に回収までは行う必要があります。
入金まで確認出来て初めて仕事は完結します。
未入金管理を疎かにする営業マンは会社からの評価を落とすことになります。
未入金の督促は嫌な仕事ではありますが、最後まで責任を持って取り組みましょう。
⇩未入金は倒産につながる可能性があります!
⇩営業の仕事って大変?マイナスイメージと実際