「入札」の仕組みって複雑ですよね。
なかなか実務を担当しないと理解できないかもしれません。
そこで入札の仕組みを簡単にわかりやすく解説します。
まずは基本となる3つの入札・契約制度(一般競争入札・指名競争入札・随意契約)について理解しましょう。
入札の仕組みをわかりやすく解説
入札の仕組みについて解説します。
入札と何か?
官公庁と建設業の関係、基本となる3つの入札制度から確認していきましょう。
入札とは?
入札(にゅうさつ)とは、国及び地方公共団体が公共工事や業務委託を発注する際に、公正に業者選定をするための制度です。
官公庁における発注の財源は、税金により賄われており最も安い業者をすることが原則となります。
そのため、複数業者から入札書を提出させ、最も安い金額を提示した業者が契約相手となります。
この入札書の提出は紙入札と電子入札があり、業者同士で金額調整が行われないよう公正に行われます。
紙入札とは?
紙入札とは入札日時に応札する業者が集まり、契約担当者の前で入札書を提出しその場で開札します。
原則として、その場で最も入札書の金額が安い業者契約相手として決まります。
都市圏における応札の多くは電子入札に移行していますが、地方部においてはまだまだ多くの自治体が紙入札を採用しています。
電子入札とは?
電子入札とは入札参加登録をしている自治体において、インターネット上で入札を行う仕組みです。
紙入札に比べ入札当日に官公庁に訪問する必要もなく、官公庁と応札業者の手間を減らすものとして移行が進んでいます。
紙入札で応札業者が集まることが談合の温床になっていたこともあり、入札の公平性・透明性を確保する制度として運用されています。
電子入札には電子カードリーダーの登録が必要となり、1社につき1枚のみ支給されます。
基本となる3つの入札・契約制度
入札・契約制度は大きく分けて3種類あります。
- 一般競争入札
- 指名競争入札
- 随意契約
これらの入札制度もさらに細分化されますが、まずはこの3つの入札制度を理解することが大切です。
それぞれの入札制度制度についてメリット・デメリットを確認してみましょう。
一般競争入札とは?
一般競争入札とはどのような制度でしょうか?
メリットとデメリットを踏まえて解説します。
一般競争入札とは
一般競争入札とは、国や地方公共団体などが契約内容や入札の参加資格を「公告」して、要件を満たした業者すべてが入札に参加することができます。
この発注者が決める参加要件には色々な種類があります。
- 申請・許可業種であること
- 地域要件(事務所が指定のエリア内にある)
- 実績要件(同様の実績がある)
- 資格要件(会社また個人資格など)
設定された要件を満たしている場合のみ、入札に参加することができます。
地方公共団体においては地域要件をしているケースが多いのが実情です。
官庁営業の担当者は入札広告を日々確認して、応札できる案件を探すことが大切ですよ。
一般競争入札のメリット
発注者からみた一般競争入札のメリットを挙げてみます。
- 広く公募して新規業者を参入させられる
- 公正に入札を行える
- 安い業者に委託できる
広く公募して公正に入札が行われるので、安い業者を選定できます。
税金で事業が行われる以上ムダ遣いがあってはいけないので、一般競争入札が原則とされています。
事業者側のメリットを挙げてみましょう。
- 参加要件を満たせば未経験でも入札できる
- 実績を作れば今後の指名獲得への足掛かりとなる
- 他の事業者とも対等な立場で競争できる。
一般競争入札で実績を作らないと、指名がかからないのが現実です。
今後の指名獲得に向けて、一般競争入札は事業者にとって重要な入札となります。
一般競争入札のデメリット
発注者からみた一般競争入札のデメリットを挙げてみます。
- 事業者が集まり過ぎて煩雑となる
- 低品質の事業者となる可能性がある
- 実績の少ない事業者の不安
要件を満たしている業者はすべて応札できるとなると、参加業者が集まり過ぎてしまいます。
未経験事業者や低品質事業者が落札する可能性もあるので、発注者からするとリスクがあることは否めません。
事業者側のデメリットを挙げてみましょう。
- 入札広告を日々チェックしなければならない
- 応札業者が多く落札が難しい
- 応札できる案件はまだまだ少ない
一般競争入札を原則とするとされていながらも、現実的には要件の縛りがあったり、指名競争入札が多かったりするのが実情です。
入札広告を見逃せば応札し損ねてしまうこともありますので注意が必要です。
⇩一般競争入札で落札するコツとは
一般競争入札を落札するためのコツとは?【官公庁営業担当者必見】
指名競争入札とは?
指名競争入札とはどのような制度でしょうか?
メリットとデメリットを踏まえて解説します。
指名競争入札とは
指名競争入札とは、国や地方公共団体などが公共事業を発注する際、特定の条件により発注者側が指名した者同士で競争に参加し、契約者を決める方式です。
一般競争入札を原則とすると規定されていますが、下記の場合に限り、例外的に指名競争入札が認められています。
- 契約の性質や目的により、競争に加わるべき者が少数で一般競争入札に参加する必要がない場合
- 工事や製造の請負、物件の売買契約で、その性質や目的が一般競争入札に適しない場合
- 不誠実な業者が参加するのを避ける場合や、特殊な案件で検査が著しく困難な場合
一般競争入札を原則としながらも、現実的には指名競争入札が中心となっています。
指名競争入札のメリット
発注者からみた指名競争入札のメリットを挙げてみます。
- 実績事業者から選定できて安心
- 応札業者が少ないので管理が楽
- 指名業者内でも競争になる
指名競争入札は、実績業者の中から選定できるの安心です。
発注者はお金よりも安心して事業を発注したいと考えていますから、指名競争入札で発注したいと考えるのも当然です。
事業者側のメリットを挙げてみましょう。
- 競合会社が少ないため落札確率が上がる
- 指名が入れば営業の手間等がなく入札に参加できる
- 一度指名が入れば長期的に指名が貰える可能性が高い
事業者にとっては喉から手が出るほど欲しい指名です。
官庁営業は指名獲得のための営業をしているといっても過言ではありません。
指名に入らないと入札にすら参加できないわけですから、官公庁の仕事をしたいのであれば指名をもらうことです。
指名競争入札のデメリット
発注者からみた指名競争入札のデメリットを挙げてみます。
- 一般競争入札よりも金額が上がる
- 指名メンバーが分かると談合も
発注者からすると指名競争入札のデメリットって少ないんですよね。
メンバーが少数すぎると談合が行われる可能性があるので注意が必要ですが、指名競争入札が主流となっている理由ともいえるでしょう。
事業者側のデメリットを挙げてみましょう。
- 指名に入らないとチャンスすらない
- 指名に入るのが難しい
- 指名に入っても落札できるか分からない
事業者からすると、指名に入ること自体が難しいのが最大のデメリットといえます。
どんなに仕事がしたくても指名されなければチャンスすらないということです。
随意契約とは?
随意契約とはどのような契約方式でしょうか?
メリットとデメリットを踏まえて解説します。
随意契約とは?
入札を行わずに契約の相手を決める契約方式で、「随契」(ずいけい)とも呼ばれます。
発注機関の都合により、国が競争させずに特定の企業と契約を締結する方式で、一般的に随意契約は特命随契ともいいます。
その事業者に依頼しないと逆に不利益が出る場合や、施行が困難である場合に行われる契約制度です。
他にも少額随契・不落随契があり、下記のとおりです。
少額随契:予定価格が少額の場合に、見積りを2社以上の企業から徴取した上で契約先を選定する方式。法令上では、予定価格が少額随契の可能な額であっても、可能な限り入札を行うように決まっている
不落随契:入札を行っても、入札参加企業がいなかったり落札しなかったりした場合、または落札企業が契約を結ばない場合には、最低価格での入札企業との間で随意契約を行うことができる。この場合は、履行期限の延長や契約保証金の免除などの条件変更を行ってもよいが、予定価格は変更できない。
随意契約のメリット
発注者側からみた随意契約のメリットを挙げてみます。
- その事業者でないと施行困難
- 安心して契約できる
- 書類事務の手間が少ない
随契で発注するということ自体、その事業者でないと施行困難であるという理由づけが必要になります。
それが通れば事務処理も楽であることは発注者側のメリットともいえるでしょう。
事業者側のメリットを挙げてみましょう。
- 競合が少ないので利益が出せる
- 落札確率が段違い
- 発注者に対するアドバンテージがある
高単価で落札できる可能性が高いので、最も獲得したい契約方式といえるでしょう。
関わりのある既存業者の倒産や特殊工法など、特別な事情がないと行われませんが、事業者にとってはメリットの大きな契約方式です。
随意契約のデメリット
発注者側からみた随意契約のデメリットを挙げてみます。
- 落札率が高くなる
- 他の業者との比較ができない
様々な事情でその事業者に依頼したほうがよい場合の発注になります。
そのため、他の業者との比較ができず割高となる可能性があります。
事業者側のデメリットを挙げてみましょう。
- 特になし
受ける側の事業者は随意契約は他との競争なく、高単価で契約できる可能性が高いのでデメリットはほとんどありません。
入札の仕組み まとめ
入札(にゅうさつ)とは、官公庁が公共工事や業務委託を発注する際に公正に業者選定をするための制度です。
施行に当たり、きちんと仕様に則って竣工させ、最も安い事業者を選定しなければなりません。
入札・契約制度には基本となる3つの種類があります。
- 一般競争入札
- 指名競争入札
- 随意契約
まずは、この3つの違いとメリット・デメリットを理解することが大切です。
官公庁への営業・ゼネコンへの営業を生業とするには、入札の仕組みを理解することは重要なポイントになりますので、理解を深めましょう。